穴の空いた両の手で、
喉の渇きは潤せず、
甘いはずの水は、
掬っても零れてゆく。
穴の空いた両の手で、
目を遮ることは出来ず、
柔らかな熱源が、
視神経を焼き切りました。
腕の無い三重の
振り子が描き出す背骨を、
短慮な烏が
啄むのでした。
不快な音を鳴らして、
無い爪を立てる、
形骸化した心地よさには、
遅効性の毒があるのです。
見たいモノだけを見て、
信じたいモノを信じ、
目が覚めたときは既に遅し、
死に至るでしょう。
全てあなたの所為です。
穴の空いた両の目で、
逃げ水を追いかけて行く、
気がつけば遠くまで、
歩いてしまいました。
穴の空いた両の目で、
硝子の向こうをそっと見る、
意味のない言葉は、
此の世に存在しないのです。
陰になり日向になり、
顰蹙の密売商人が、
土足で踏み込んで
来るのでした。
ただ緩やかに黄昏て行く、
誰も止め方がわからずに、
心臓の位置を避けるようにと、
横から杭が打ち込まれました。
不快な音を鳴らして、
無い爪を立てる、
形骸化した心地よさには、
遅効性の毒があるのです。
見たいモノだけを見て、
信じたいモノを信じ、
沢山の足の音が、
近づいていたのか。
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