あれはとても暑い夏休みの日
オカンがローテーションで作りよる
ひじきと豆炊いたのが嫌で近所の河原に捨てようと思い立つ
すぐ終わる任務のはずだったが
浮浪者のオッサンの視線が気にかかる
待てど暮らせど奴は動かない
どうやら此処が根城らしい
そこで僕はプランBに変更 これを奴に恵んでやろうと思う
見た所住む場所はおろか喰う物にも困ってるのは明白だし
問題は最初の一声だが 此処は敢えて定番でいこうと思う
「あのー これ よかったらー」
近付いて解る 重く鈍い異臭
♪
オッサンは差し出したビニール袋の中身を怪訝そうに注視
暫しの沈黙の後に云う
「お前 はだしのゲン読んだ事ある?
晩飯や給食やなんかで微妙な物出された時、
あいつらにやりゃ嬉々として貪り喰ってくれた上で
友達にまでなってくれんのになぁ
俺もつくづく嫌なガキやった
そんな事ばっか考えとった でもお前も同じ様な発想で
俺にコレ与ようとしてんとちゃうの?
ホームレスと小学生のハートウォームで奇妙な友情劇
そんな感じの展開になんの
お前 期待したんちゃうの?」
クラスで圧倒的有力側のグループが
プール帰り風の出で立ちでこっちを見てる
浮浪者のオッサンが唯一の友と
吹徳されてしまうと思ってビクビクしてたのに
二学期になっても何の話題にもなっていなかった
♪
伸びっ放しの髭とも髪ともつかない茂みの向こう側
よく見ればオッサンは僕が思ってたより
ずっとずっと若かった
オッサンは絵描きらしく
時折ソレを街に出て売るらしい
「これでも美大いっとってん 中退やけどな」と
オッサンが黄色い歯を出して笑う半ば無理矢理見せられた絵は
上手いとか下手とかの話ではなく
何の絵かさえも解らないので
「よくわからないです」とだけ答える
するとオッサンやけに芝居染みた口調で
「おれも よーわからんねん」ってちょい待てや
こんな感じの展開になんの
お前が 期待したんちゃうの?
完全にしてやられた 主導権奪われた
孤独な少年が温もり求めた系にされちまった
まあ せっかくやし と手掴みで喰らう
髭とも髪ともつかぬソレにまとわるひじき
いよいよ調子づくオッサンの仙人モード
「孤独は自由の色違い 満足は幻滅の影法師」
僕はロマンティック過ぎて吐きそうさ
独創性あるぶりたい凡人はこの世界にごまんといて
よーわからん絵を、よーわからん奴が買うんだってー
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