万雷の死が暗澹と 降り注ぐ不夜城を
背にして二人は 走る――――
「魔女に囲われていた一人の少年と一人の少女は、
監視の目を縫うようにして脱出に成功する。
共に囚われている者達を見捨てるような形で。
けれど、いつか必ず助けられる機が訪れると信じて...」
「振り返るな、足を前に運べ!」
「わ、わかってるっ」
気付いた時には 形振り構わず不意に駆け出していた
折れていると思った心をまた 奮いたたせてくれた
一人じゃない... 互いの存在
二人が逃げれば 残された者の処遇にどんな酷い
影響を及ぼしてしまうだろう?
想像をすることさえも怖く
必死に思考押し殺した――――
月明かり その色彩は偽者の夜だけを染め上げて
諦観めいた囀りを 最果てに照らしだす 無垢なる残骸を憂い...
幾夜を徹して 街へ戻っても帰る場所なんてなく
家族はもうどこにもいないのだと わかりきった事実を
突きつけられ... 言葉を失う
旧知の誰かに 見つかることさえ許されないと知った
魔女の元へ連れ戻されてしまう
ゆっくりと眠ることさえできず...
自由は虚空に掻き消え――――
Ah... 遠く離れた
異国にまで逃げる路銀もない二人
この地から離れたとして 安寧の瞬間など訪れない
身体に焼きつけられた 永遠に足枷となる消えない烙印
その烙印を見咎められれば すぐに魔女に引き渡されるだろう
立ち上がれ 未だ囚われ救いを待ち続ける友のため
その意思だけは失くさない
この傷に誓うんだ 夜天を睨んで
月明かり その色彩は偽物の夜だけを染め上げて
諦観めいた囀りを 最果てに照らしだす 無垢なる残骸を憂い...
「ね、顔色が悪いよ?」
「君こそ真っ青だ。けど、いつまでも怖がってばかりもいられない」
「もう、わかってるっての!」
「仲間を助けると誓った確かな決意。
これを一夜限りの自由になんてしないと、二人は中空を睨んで...」
「一瞬でした決意など、一瞬で消えてしまうものだ――――」
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