【贈物】
世界は転がる球のよう 硝子のような音を立て すぐに壊れてしまうのさ
上へ下へと右へ左へ 宙は虚ろ ここは光っている これは光っている
壊れてしまえば 唯の欠片だ 弄ぶ故に
狂った老婆 怪異な部屋 喋る獣が火を囲む
魅惑の霧は魔法の如く 虚像の君には近付けない
安楽椅子を揺らし 血と汗で編んだ冠を
偽者の玉座で 指掛け廻している
【道化】
太陽でも月でも星々でも 貴様は歓んで浮かべてみせるだろう
愚かだ 滑稽だ 浅ましい しかし故に愉悦 でもある
歓びの果てに憂いあり 憂いの果てに歓びあり
人は言葉を聞けば 何か意味があると錯覚する
完全に矛盾したものは 賢者にも愚者にも 等しく神秘的な響きを与える
赦されぬ 夢に融けて 流れてゆく
破滅だと 知らぬままに 溺れてゆく
ほどけた螺旋は 縺れ墜ちてゆく
天日の光を引き連れて
理想に酔いしれ 憧れた人よ
重なる 言葉にとけて消えた
老婆が描く奇怪な円 奏者の居ない半狂乱の宴
因果な人形 一人は松明 一人は書物
馬の足を掲げ それを合図に
忌むべき 最古の火焔を呑む
【禁忌】
一より十を創り 二は去りし 直ちに三を 然らば満つる
四を失い 五と六をして かく魔法は説く
七と八を創り 此処に於いて果たされん
即ち 九は一にして 十は零に他ならず
世界に隠匿せし 高位なる叡智の雫
思惟せざる者のみ 祖を与え 労せずをして是を得ん
壊れて 砕けて 捻じれた 運命を
温かな昔日に 焼かれゆく
この身も 心も 永久に捧げましょう
絡めた小指に誓いながら
嗚呼 溢れる 月の雫は
雪に梳け 忘れてしまう
そう 銀色の空を泳ぎ 掻き抱く 影に消えた
ほどけた螺旋は 縺れ墜ちてゆく
天日の光を引き連れて
理想に酔いしれ 憧れた人よ
重なる 言葉にとけて消え
壊れて 砕けて 捻じれた 運命を
温かな昔日に 焼かれゆく
この身も 心も 永久に捧げましょう
絡めた小指に誓いながら
美しく 契った華と 約束の言葉
あの日見た 鏡に映る 嘘は何処にある
自己の中に眠る 理想たる永遠の美
その影を 這い求め彷徨う
この場所に満ちている 懐かしい黄昏の光
それはまるで 牢獄の中で見つけた祝福の如く
私を照らしていた
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