夢寐の如き邂逅――其れは悲劇の幕開け
惣別一切 賓智の洞に沈み
稚拙に溺れ 無様に喘ぐ
超然たる代償は 歓喜を躙り
無明を弄し やがて深淵を識る
月影は仄かに 幽遠への逃避
忌まわしき牢獄 天日は遙かな陽炎
骸に抱擁れた 絞罪の夢
嗚呼 此処は己が世界
晦冥を模り 星を注視る
痛みに阻まれ
黄金は墜つる 万象に融け
爛れた景色は 渇えし咎と
「精神が獲得した霊妙なる音は例外なく異質に塗れ、
世上の善に至ろうとも、より優れたものは虚無へと消える。
鮮麗たる情調すら俗世の澱みの中で凝結してしまう」
真紅ゆらめく 鬼胎の焔
官能を乱す 恐慌の呼応
光耀と驕り 此肩に己惚れ
嗚呼 其処は己が虚構
凄惨で 狡猾な 嘲る環に飲まれ
奏 絶えず至らぬ思いを 永久に憂いても
求めても届かぬ 真理に妬かれ
冥暗に 堕ちてく
満たされぬ 参苦を舐るが故に
この杯を
使嗾 亡失は 虚ろに梳けるような快楽
甘く響く詩 朧に帰する
欠落を手繰り 惨めに臥す
黄昏の中で
荒む働撞 暁の音
翳りゆく穹に 擦れた声を
離れゆく 離れゆく 飢渇に苛まれ
奏 独り彷徨う私は 永久に恋い焦がれ
艶麗に溢れる 滅びのように
惨然と 朽ちてく
狂おしく響む 渺茫たる葬瀲
この謳を
黒き幽玄は 恍惚へ誘う円か
白日に耽り 眠れ今は唯
「厭忌たる音吐朗々と、永劫の詩よ。
暁闇に恐れ、唯の一つも叶わずに――」
欣幸たる兆しさえ 誹り讒謗し穢す
躍動する創造すら 衆愚の灰は阻碍する
夜陰が降りても尚 憂虞は拭えず
悪夢に脅え 嘆き悲しむ
己が内に眠る渇望は 己が深淵を掻き乱し
或は 己が天上に座する渇望は、故に境界に至る事はない
此の身は万有の引力に囚われ 故に死こそを望み生を厭う
「それでいて死が真に歓迎される事はない――」
否 凱歌の中で 栄光の中で
血に塗れた月桂冠を戴き死に至る者は幸せだ
諧謔を踊り狂い 少女の腕の中で死に至る者は幸せだ
嗚呼 あの真紅の焔と歓喜の奔流に飲まれ
死に臥すことが出来たなら
――あの恐れと狂乱の中――
優しい詩は馴染み 去来する幼き感情の余韻に欺かれ
悲哀の洞たる己が身を鎖す一切を呪う
己が魂を至高とする慢心 官能に逼る万象の幻惑
夢想に来る栄冠と死後の誉れ 隷属し媚びる占有
あの杯も 神の寵愛も 希望も 信仰も
何よりこの痛みこそ呪わしい
求めても届かぬ 真理に妬かれ
冥暗に 堕ちてく
満たされぬ 参苦を舐るが故に
この詩を
艶麗に溢れる 滅びのように
惨然と 朽ちてく
狂おしく響む 渺茫たる葬瀲
この謳を
黒き幽玄は 恍惚へ誘う円か
白日に耽り 眠れ弔いを奏でて
もはや知識などには厭いている
一切の未知と奇跡を饗するがいい
痛みを伴う歓喜 恋に惑う故の憎悪 清々しい程の窮愁に縺れる儘に
霊長に科された罰を玩味し
やがて天壌を捉え 歓喜も苦痛も此の胸に刻み
己が自我を世界に重ね その果てと共に滅びよう
嗚呼 至極たる 刹那に捧ぐ
邂逅と離別の言葉
歪み捩れた光は朽ちて 針が墜ちるなる 果たされるだろう