この末期においてなお思い出す
私だけが知っていた鳥の姿を
遥か遠き空のその何処よりか
風を従えて舞い降りた
思えばはじめからお前はきっと
私を騙そうとしていたのだろう
お前のあの目が悪戯めき笑う
若き日の私を誘うように
乞われるがままにその手を取った——その始まりを悔やめようか——嗚呼。
鳥よ 鳥よ
そは空の何処。
この手引く先私を連れて行く
鳥よ 鳥よ
翼持つものよ。
その姿 けして忘れえぬもの
わたしが見上げる限りに お前は空を翔けてゆくのだろう
流れる時さえも行く末知らず
ならばこの身をして何を知りようか?
お前と過ごした日々のその中に
けして戻らぬ針、刻むことも——
それはきっといつか来る定めの日
わたしだけがそれを受け入れられずに
お前のあの目が愁いに沈む
若き日の私を拒むように
乞うこともできずにその手を離した——唐突すぎる終わりのときに——嗚呼。
鳥よ。鳥よ。
どうか今一度。
雲のあわい
お前を探せども
鳥よ。鳥よ。
翼持つものよ。
その姿 けして二度とは見えず
お前の居ない空は遠く どこか余所余所しいほどに虚(ひろ)く——
何故お前はと問えども答えなど無く
徒に時 重ねるまま
お前のほかに誰が翼持つだろう?
たとい私にしか見えぬとて
この期(とき)におよんでこの目に映る——空より舞い降りた幻想(まぼろし)——嗚呼、それは!
鳥よ... 鳥よ...
何故今になって——。
お前の目は
何も語らぬまま。
鳥よ... 鳥よ...
翼持つものよ——
その姿 よくぞ再びここに——!
鳥よ!鳥よ!
さあ今一度
この手引いて私を連れて行け
鳥よ!鳥よ!
翼持つものよ!
お前を けして離しはしない!
その空へと私も行こう いま循環る(そらかけめぐる)風となって——
お前が空飛ぶときには 私も傍に居られるようにと——
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