今、あなたのことを
思い出したところ
梢の蕾が少しずつ膨らみはじめた頃
春を待たないまま
あなたはいなくなって
不自然に空いた生活の穴
埋まりはしないままだ
あたまの中にあなたのひびき
鼓膜にはもう届かない声
吹き抜ける風
すり抜ける影
滲んだようなひだまりみたいな声が響いてる
♪
はじまりの奇跡も
おわりの騒めきも
美しく綴られた小説みたいに季節は捲れていく
♪
さよならも
ありがとうも
ごめんも
またねも
いつかみたいにふざけたことも
言えなかったな
届いたのかな
それすらもう分かりはしないけれど
あたまの中にあなたのひびき
もう聴こえることはなくても
覚えているよ
大事にするよ
滲んだようなひだまりみたいな声を
忙しなく電車は今日も駆けていく
すぐ赤になる信号機の癖
交差点の隅であなたと見た桜の蕾が少しだけ開いてる
響いてる
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