少しその街を離れて ケータイの電源を切って
しばらく友達も忘れて 鈍行に揺られるだけでいい
君にとってその生活が時折負担になったなら
恋しくなるまで旅をして
恋しくなったら戻ればいい
人生は駆け抜けるものではない
人生は振り返るものではない
いいや 人生はあの日の月が照らした
はぐれ雲のようにたゆたうだけ
こないだ君が彼女と観た映画のストーリーみたいな
展開の透けた将来に僕らの求めるものなどない
顔を赤らめる事ばかり もう口にしたくない名前
顔を青ざめる事ばかり もう思い出したくない場所
人生の死は終末なんかじゃない
生涯の完成であり無ではない
いいや 人生の事など僕は分からない
けもの道のように続くだけ
なおも美化しようのないヘマやドジを踏んで
なおも美観を損ねる過ちを犯して
なおも無邪気に希望を抱いて笑う
子鳩を追う子供の手みたいに
ただ真っ直ぐなだけ
日帰りでも何泊でもいい 幼い日の腕白ぶりに
敵うような美しさの思い出探しに出るといい
人生に悲哀は気取りでしかない
人生に素直は演技でしかない
いいや 人生は方位磁石も星も無い
ひとり旅のように風任せ
そして誰かを失い 誰かと巡り会い
そして何かが過ぎ去り 何かを思い出し
そして転がり続ける自分を歌い
何にも見えない夜空を笑い
絶え間なく回るだけ
少しその街を離れてケータイの電源を切って
しばらく友達も忘れて鈍行に揺られるだけでいい...
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